コーチ石川の感動日記

100.アボカドの木

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これが種から育てた自慢の「アボカドの木」です

 「感動日記」もいよいよ100話目を迎えました。記念すべき100話目は、この話にします。

 もう4年ほど前のことでしょうか。近所のスーパーでアボカドを買ってきました。皮をむいて、実をお料理に使った後、直径3cmほどの種が残りました。この種をあらためてしげしげと見つめてみますと、実に美しい球形をしています。まんまるです。そのままごみ箱に捨てるのが、急に忍びなくなって、キッチンのシンクの上にポンと置いておきました。

 その状態で1週間ほど過ぎましたが、だからといって、その種がどうなるわけでもありません。それでもなんとなく捨てられなくて、種がすっぽり納まるぐらいの小さな器に水をはって入れてみました。しばらくそのままにしておきましたが、「だからといって、どうなるわけでもないよね」。そんな気持ちになりかけていた頃でした。球のてっぺんにパカッと亀裂が入りました。

 「お!割れるのか?」また、しばらく観察を続けました。日に日に亀裂は大きくなり、ある時、割れ目の間から、小さな芽が出始めました。
「おお!これは、おもしろい。アボカドの芽だ!」。水を替えながら、しばらく観察すること3ヶ月。芽は、細いながらもまっすぐ真上に伸び、そのうち、芽から葉っぱが枝分かれしてきました。そして、種の亀裂の間から今度は根っこらしきものが出始めました。「これはなかなかおもしろい!」。こうして、芽はやがて茎になり、葉はどんどん増え、根も増えました。小さな器ではおいつかなくなって、水栽培用の花瓶を買ってきて移し変えました。

 3年前、京都から札幌に転居する際も、そのまま捨てていく気になれず、花瓶ごと抱えて飛行機に乗りました。札幌でも着々と成長を続けました。やがて、種はどんどん退化し、球状の種はすっかり根っこに変わってしまいました。花瓶では立てていられない状態になり、ついに思い切って、植木鉢に土を入れて植えてみました。水から土への環境変化にも見事に適応。その後もどんどん成長を続け、そのたびに植木鉢も大きなものに替えていきました。

 現在、アボカドの木は、全長1m近くに育っています。まだ、花や実は見られませんが、葉っぱは順調に新陳代謝を繰り返し、大きくなっています。この木にいつか、アボカドの実がなる日も来るのだろうか、そんな希望を抱かせます。このアボカドを種から育てるのに私がしたことといえば、ただ、水を替えること、植木鉢に植え替え、水をやり続けたこと。それだけでした。特別な肥料をやったりはしていません。

 私は思うのです。この球状をした種の中に、茎になるもの、葉になるもの、根になるもの、そして、花になり実になるもの、すべての資源がもともと詰まっていたのです。こんな直径3cmのわずかな種の中に、アボカドになるための要素が最初から全部詰まっているのです。しかし、それをキッチンのシンクの上に置いておいたのでは、アボカドとして成長することは期待できません。種のままで腐っていきます。適切な場所に置いて、水を与え続けることで、ちゃんと芽を出します。アボカドとしての成長を始めます。

 人も同じではないでしょうか。もともと、その人がその人として成長し成功するための資源はその人の中に全部詰まっているのです。足りないものは何もない。もともと必要とするものはすべて持って存在しているのです。この人がどんな花を咲かせるのか、それを見守るコーチの仕事は、私にとってとても刺激的でやりがいを感じます。

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